熱性けいれんの症状・原因・対処法・予防、救急車の呼ぶ判断基準、ダイアップ座薬(坐剤)(一般名:ジアゼパム)の使い方や注意点、てんかんとの違い、抗ヒスタミン薬が熱性けいれんを誘発する件、2015年に改定されたガイドラインの内容をベースに御紹介させて頂きます。
熱性けいれんとは
主に生後6~60ヵ月までの乳幼児期に起こる。通常は38度以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性、非けいれん性を含む)で、髄膜炎などの虫枢神経感染症、代謝異常、その他の明らかな発作の原因がみられないもので、てんかんの既往のあるものはじょがいされる。
熱性けいれん 診療ガイド 2015より
「単純型熱性けいれん」と「複雑型熱性けいれん」の違い
熱性けいれんは「単純型熱性けいれん」と「複雑型熱性けいれん」とに大別されます。
以下のいずれか1つも該当しない場合は「単純型熱性けいれん」、1つでも該当する場合は「複雑型熱性けいれん」となります。
・熱性けいれんの発症前から神経学的異常がある
・熱性けいれんの症状が15分以上続く
・熱性けいれんの症状が24時間以内に繰り返す
・熱性けいれんの症状(主にけいれんの症状)が左右非対称に出る
「単純型熱性けいれん」と「複雑型熱性けいれん」とでは医療機関での対処法が異なりますので、まずはどちらに該当するのか医師に回答できるように症状を確認するようにしましょう。
熱性けいれんを発症する乳幼児の割合
6ヶ月から5歳位までの乳幼児の10人に1人ぐらいと珍しくない病気で、初回の発症は3歳未満が8割となっています。
なお、親や兄弟や親戚に熱性けいれんにかかったことがある人がいると、発症率が上がる統計も出ています。
熱性けいれんを繰り返す割合
1回だけしか発症しない乳幼児の割合が70%ぐらいと大半です。
2回目を発症する確率はその30%と、より割合は低くなりますが、3回目を発症すると以後は繰り返しやすい傾向があるようです。
熱性けいれんの主な症状とは?
・全身の硬直、けいれん
・白目をむく
・意識を失う
・泡をふく
・呼吸が止まる(顔色が悪くなる(チアノーゼ))
・上記の症状が2・3分(長くて5分程度)
熱性けいれんの原因
一般的には未熟な脳が原因ではないか?と言われていますが、熱性けいれんの原因はまだわかっていないのが現状です。
現状の有力な説としては、脳は微弱な電流を使って指令を出しますが、まだ未発達状態の乳幼児の脳は高い熱を出すとその調整がうまく機能しなくなり、けいれんが起きてしまうと考えられています。
熱性けいれんの症状が出た際の対処法
・平らな場所に寝かせる
※無理に移動はしない。
・嘔吐による窒息の可能性があるため顔を横に向けて気道を確保する
・衣服を緩める
・病院での診察に備え、けいれん時の様子(※)を確認しておく
※けいれん症状の時間、左右非対称のけいれんがおきていないか等
熱性けいれんの症状が出ている際にしてはいけないこと
大声で呼びかけたり、身体を揺すったりする
体を揺する刺激が、けいれんを長引かせる可能性があります。
舌を噛まないように対処をする
けいれん時に舌を噛むことはほとんどないため対処は不要です。
むしろ、けいれん時は噛む力が強く歯を開けることも難しく、開けられても噛まれてしまったり、口の中に雑菌が入ってしまう可能性もあるため絶対に対処しないようにしましょう。
救急車を呼ぶかどうかの判断基準
以下の内容に1つでも該当する場合は救急車を呼びましょう。
・けいれんが左右非対称に起きる
・発作が5分以上続く
・症状が落ち着いても体調がすぐれない
上記に当てはまらない場合は、いったん症状がおさまるまで様子を見て、その後子供さんの機嫌や、何か症状が確認されない場合は問題ないと判断し、無理に救急車を呼ぶ必要はありません。
救急車で運ばれても病院に着いたらケロッとしている事が大半だからです。
救急で行かなかった場合には、翌日にでも、かかりつけ医に診てもらえれば良いでしょう。
救急病院での熱性けいれんの診察
問診
「単純型熱性けいれん」と「複雑型熱性けいれん」とを判断するため上述の以後の内容の問診が行われます。
・けいれんの時間
・左右非対称のけいれんがどうか
・その他、特徴的な症状(けいれん終わった後も体調が悪い等)
上記問診で問題が見受けられる、つまり「複雑型熱性けいれん」と診断された場合は、血液検査、脳のCTやMRI検査、髄液検査が行われることが多いようです。
ダイアップ座薬(坐剤)を入れる
上記問診で問題が見受けられない、つまり「単純型熱性けいれん」と診断となれば、けいれん予防座薬のダイアップという薬を使用します。
ダイアップ座薬の経過を安静にして待つ
ダイアップ使用後は、しばらく様子を見るため安静にして待ち、特に問題が見られなければ、次回熱性けいれんに備えダイアップが処方され、帰宅することになります。
つまり、次回の熱性けいれん予防をするためのダイアップ使用は親御さんがすることになります。
ダイアップ使用にあたって、いくつか注意事項があります。
ダイアップ座薬(坐剤)の使い方
ダイアップはいつ使うの?
基準は38度を超えているかどうかですが、過去に37度5分でも発症したことがある場合は、その体温を基準とします。
熱性けいれんは熱の上がるタイミングで発症しやすいと言われていますが、38度というのは目安にしか過ぎないためです。
お子さんに合わせてダイアップを使うようにしましょう。
また、けいれんの発作が起きた場合も発作が落ち着いてからダイアップを使うことも有効です。
理由は2回目のけいれんの発症を予防できるためです。
2回目のダイアップはいつ使う?
ダイアップは8時間の効果があると言われているため、2回目のダイアップの使用は1回目の使用から8時間あけてから使用するようにします。
ただ、必ず使わないといけないわけではありませんので、子供さんの様子や、過去に熱性けいれんを何度も発症していているか等、子供さんに応じた対応を行いましょう。
なお、2回目のダイアップの使用を行った場合は、今回の発熱時でのダイアップ使用は終了となり、後は安静に熱が下がるのを待つだけとなります(3回目の使用は危険ですので絶対に使用しないようにしましょう)。
ダイアップと解熱剤の併用はできる?
併用は可能ですが、ダイアップを使用して30分経ってから解熱剤を使うようにしましょう。
同時に使うとダイアップの吸収が遅れてしまったり、解熱剤を先に使うと薬の効果を弱めてしまう可能性があるためです。
解熱剤を使うタイミングは?
熱が出ているということはウイルスに対抗するための防御反応(ウイルスの活性を鈍らせる効果)のためなので、40度を超える熱である、子供の機嫌がずっと悪い、水や食べ物が取れないなどの重篤な症状を見せない限りは解熱剤を使わないほうがよいでしょう。
また、解熱剤を推奨しない理由としては、熱性けいれんの原因が熱のアップダウンが激しい時と考えられているためです。
つまり、一時的に解熱剤で熱が下がっても、薬の効果が切れるタイミングでまた急激に熱があがり熱性けいれんの症状が出てしまう可能性が高まるため、極力解熱剤を使わないほうが良いといわれています。
ダイアップの副作用と注意事項
ダイアップを使用すると熱性けいれんは予防できるのですが、薬である以上、副作用はあります。
副作用は以下の通りです。
・眠気
・興奮
・もうろう状態
これら副作用の中でも、ふらつきは出やすい症状なため、ダイアップを使用した後は子供が歩いたりすると転倒の危険性が高まるため、いつも以上に子供から目を離さないようにしましょう。
このように副作用は出てしまうことが多い薬ではありますが、2・3時間もすれば薬の副作用は落ち着く安全性の高い薬で有名です。
日常生活での熱性けいれん予防について
普段の生活において、熱性けいれんの持病を持っていたとしても何も日常生活に影響はありません。
ただ、高熱が出る前にそれをいかに早く察知し、ダイアップ座薬を使用できるかが熱性けいれんの予防対策としては重要です。
よって、お泊りのお出かけがある際にはダイアップ座薬は持っていくようにしたいですね。
また、高熱かどうかをいつでも計れるようにダイアップと共に体温計の常備も大切です。
抗ヒスタミン薬と熱性けいれんとの関連性
鼻汁やくしゃみの改善、アトピー性皮膚炎や蕁麻疹の痒みの改善に使われる薬である抗ヒスタミン薬が、熱性けいれんを誘発したり、けいれんの時間が長くなるという可能性があるという研究結果が少例ですが出ています。
鎮静性抗ヒスタミン薬の投与により熱性けいれんのけいれん持続時間は延長する
まだ可能性という段階ではありますが、いくつか研究結果が出ていることも事実ですので、医療機関を受診する際は熱性けいれんにかかったことがあることを医師に伝えた方が良さそうですね。
熱性けいれん発症後の予防接種
一般的には3か月あけてから予防接種を受けることが望まれますが、かかりつけ医と相談の上、予防接種を受けるようにしましょう。
熱性けいれんとてんかんとの違い
熱性けいれんは高熱を伴うことが前提となっていますが、てんかんは平熱時でも発症することが大きな特徴です。
また、上述の「複雑型熱性けいれん」の場合や、熱性けいれんが5歳を過ぎても発症する場合は、てんかん発症率が高いと言われていますので、そのような場合は医師と慎重に経過を見守るようにしましょう。
なお、てんかんと診断された際は、抗てんかん剤が処方され経過を診ていくことになります。
熱性けいれん 診療ガイドライン 2015
2015年に熱性けいれんの診療ガイドラインが改定されました。
以下がそのPDFページとなっています。
熱性けいれん 診療ガイドライン 2015の概要
上述の説明は基本ガイドラインに沿った説明とはなっていますが、その他の内容は以下の通りです。
・単純型熱性けいれんは後遺症も少ない疾患(良性疾患)のため、ダイアップ等の予防薬の処方は減る傾向にある。
・6歳までには大半の熱性けいれんは終了することを保護者に知ってもらう。