風疹の情報(大人/子供の症状、抗体を得れる予防接種(ワクチン)情報(予防接種を受けていない世代/費用/副作用)、妊婦の風疹情報、風疹と麻疹(はしか)の違い、感染経路、流行情報等)をまとめました。
なお、信頼度の高い情報を提供するため厚生労働省と、国立感染症研究所の情報を中心に記事を作成しました。
風疹の基本情報
風疹とは?
風しんとは、風しんウイルスによる急性の風しんウイルスによっておこる急性の発疹性感染症です。
風しんへの免疫がない人に対して1人の患者から5~7人にうつる強い感染力をもっています。
感染経路
風しんの感染経路は飛沫感染で、ヒトからヒトへ感染します。
発疹の出る前後約1週間は人に感染させる可能性があります。
症状
症状は感染症状を示さない人から、重篤な合併症併発まで幅広い症状があります。
脳炎や血小板減少性紫斑病を合併する可能性があり、決して軽視はできない疾患です。
大人が風疹に罹った場合の症状
成人で発症した場合、高熱や発疹が長く続いたり、関節痛など、小児より重症化することがあります。
子供(幼児)が風疹に罹った場合の症状
子どもでは風しんの症状は比較的軽いのですが、まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症が、2,000人~5,000人に1人くらいの割合で発生することがあります。
妊婦が風疹に罹った場合の症状
風しんに対する免疫が不十分な妊娠20週頃までの女性が風しんウイルスに感染すると、眼や心臓、耳等に障害をもつ(先天性風しん症候群)子どもが出生することがあります(妊娠1ヶ月でかかった場合50%以上、妊娠2ヶ月の場合は35%などとされています)。
妊娠中の女性は予防接種が受けられないため、特に流行地域においては、抗体を持たない又は抗体価の低い妊婦は、風しんが発生している地域では、可能な限り不要不急の外出を避けていただき、やむを得ず外出をする際には可能な限り人混みを避けていただくなど、風しんにかからないように注意してください。
また、妊婦の周りにいる人(妊婦の夫、子ども、その他の同居家族等)は、風しんに感染しないように予防に努めて下さい。
予防接種
風しんの予防のためには、予防接種が最も有効な予防方法です。
予防接種法に基づく定期の予防接種、2回の接種を受けることを目標としていますが、医療・教育関係者や海外渡航を計画している成人も、風しんのり患歴や予防接種歴が明らかでない場合は予防接種を検討しましょう。
風しんワクチンを接種することで、95%以上の人が風しんウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。
また、2回の接種を受けることで1回の接種では免疫が付かなかった人の多くに免疫をつけることができます。
さらに、接種後年数の経過と共に、免疫が低下してきた人に対して、追加のワクチンを受けることで免疫を増強させる効果があります。
予防接種の副作用
1回目のワクチン接種後の副反応として最も多く見られるのは発熱です。
接種後1週間前後に最も頻度が高いですが、接種して2週間以内に発熱を認める人が約13%います。
その他には、接種後1週間前後に発疹を認める人が数%います。
アレルギー反応としてじんま疹を認めた方が約3%、また発熱に伴うけいれんが約0.3%に見られます。
2回目の接種では接種局所の反応が見られる場合がありますが、発熱、発疹の頻度は極めて低いのが現状です。
稀な副反応として、脳炎・脳症が100万~150万人に1人以下の頻度で報告されていますが、ワクチンとの因果関係が明らかでない場合も含まれています。
なお、麻しん含有ワクチンは、ニワトリの胚細胞を用いて製造されており、卵そのものを使っていないため卵アレルギーによるアレルギー反応の心配はほとんどないとされています。しかし、重度のアレルギー(アナフィラキシー反応の既往のある人など)のある方は、ワクチンに含まれるその他の成分によるアレルギー反応が生ずる可能性もあるので、接種時にかかりつけの医師に相談してください。
予防接種を受けていない世代

参照元:風疹含有ワクチンの定期予防接種制度と年齢の関係(平成30年(2018年)2月1日時点)│麻しん・風しんの発生状況について 国立感染症研究所 感染症疫学センター
現在は風疹の予防接種を2回摂取することが当たり前となっていますが、予防接種を受けていない世代があります。
それが上の画像の通り、1990年4月2日生まれより前の人達です。
この世代の人たちは1回しか予防接種を受けていない、あるいは、1979年4月2日生まれより前の男性、1962年4月2日生まれより前の女性に至っては一度も予防接種を受けていないのです。
そのためこの世代の人たちは風しんに対する抗体を持っていない可能性が高いため、早急に予防接種(ワクチン)を受けることが推奨されています。
予防接種の費用
定期接種の年齢(1歳児(第1期)、小学校入学前1年間の幼児(第2期)の場合は、多くの自治体では補助をすることになっており、原則的に無料または若干の自己負担で接種できるといってよいでしょう。それ以外の年齢の場合は自己負担になるので、接種を行なっている医療機関などに問い合わせてください。料金の設定は、それぞれの医療機関で異なります。
子供(小児)の風疹の予防接種
1歳児(第1期)と小学校入学前1年間の幼児(第2期)に原則として、麻疹風疹混合(MR)ワクチンが接種されるようになっています。
この間に接種をうけると、公費負担を受けることができ、通常無料または若干の自己負担のみで接種できます。
なお、風疹予防接種の記録は免疫の有無の確認に将来必要です。女性・男性ともに生涯大切に保管してください。
大人が風しんの予防接種を受けるにはどこに行けば良い?
まずお近くの小児科医に相談することをお勧めします。
最寄りの保健所や、地域の医師会に問い合わせるのもよいでしょう。
発生状況
風しんの感染症発生動向調査に基づく最新発生報告数は、定期的に国立感染症研究所ウェブサイトに掲載されます。
風疹Q&A
風疹と麻疹(はしか)の違い
風しんも麻しんと同じウイルスによる感染症です。風しんは「三日ばしか」とも呼ばれます。
「はしか:麻しん」と「三日ばしか:風しん」を混同している人が多くいますが、この2つは全く別の疾患です。
「三日ばしか」にかかったことがあっても、「はしか」の免疫をもっていることに はなりませんし、「はしか」にかかったことがあっても、「三日ばしか」の免疫をもっていること にはなりません。
「風しんの場合も、患者のせきやくしゃみのしぶき(飛沫)に含まれるウイルス粒子を吸い込む ことによって感染しますが、感染力は麻しんより弱いと言えます。
風しんウイルスが体の中に 侵入すると、風しんに対する免疫がない人では、14~21日(平均16~18日)の無症状の期間(潜 伏期)を経て、発熱と発しん(赤いぶつぶつ)があらわれます。
発熱は約半数にみられますが、37°C台の微熱程度で終わることも多く、麻しんに比べるとかなり軽いといえます。
発しんは全 身に広がりますが、麻しんよりその色は淡く、3日程度で消えてしまいます。
また、首や耳の後ろのリンパ節(首のまわりのぐりぐり)が腫れて、3~6週間位続くことも特徴的です。
発熱 と発しんは通常は数日で治ってしまうので、「三日ばしか」とも呼ばれるゆえんです。
風しんで は、せきや鼻水、目が赤くなるといった症状も出ますが、麻しんに比べると軽いです。
発熱と発しんとリンパ節の腫れが風しんの代表的な3症状ですが、3つともそろわないことが多くあります。
また、全く症状が出ないことも 15%くらいあります。
典型的な症状がそろわない場合や、周りで流行が起こっていない場合は、溶れん菌感染症やりんご病(伝染性紅斑)といった、他の疾患と間違われることもあります。
風しんの患者から風しんウイルスが排泄されている期間は、発しんが出現する前後約1週間 と言われていますが、熱が下がると急速に感染力は弱くなります。
風疹の流行の現状は?
かつてはほぼ5年ごとの周期で、大きな流行が発生していましたが、1994年(平成6年)以降は大流行はみられていません。しかし、局地的流行や小流行はみられており、予防接種を受けていない場合、発症の可能性は少なくありません。
特に2002年(平成14年)からは局地的な流行がつづいて報告されており、2003年から2004年には流行地域の数はさらに増加し、例年0~1名であった先天性風疹症候群が10名報告されました。
これを受けて、厚生労働科学研究班による「緊急提言」が出されました。その後、風疹の流行は一旦抑制されました。
ところが、2011年から、海外で感染して帰国後発症する輸入例が散見されるようになり、福岡県、大阪府、神奈川県等で地域流行が認められました。事業所での成人男性の集団発生も複数報告されました。
その後、2012~2013年にかけて大規模な流行となり、この2年間で16,000人を超える全国流行となりました。
約90%が成人で、男性が女性の約3倍多くかかりました。
この流行の影響で、45人の赤ちゃんが先天性風疹症候群と診断されました。
2014年以降、風疹の患者報告数は減少し、2017年は年間93人(暫定値)でした。
約70%が成人で、男性が女性の2倍多く報告されました。93人中15人(暫定値)は、インドネシア、フィリピン、タイ、インド、モロッコ、イタリア/スイス、ドイツ等、海外で感染し、帰国後発症した輸入例でした。先天性風疹症候群は、2015年以降報告されていません。
妊娠中の抗体検査の結果、抗体価が低いことがわかったが、今後どのようにすればよいか?
風しんが発生している地域では、不要不急の外出を避けていただき、やむを得ず外出をする際には可能な限り人ごみをさけていただくなど、風しんに感染しないよう注意してください。
また出産後は、早期の段階で風しんの予防接種を受けることをおすすめしています。
また、風しんの抗体価が低い妊婦の同居家族については、風しんにかかったことがなく、2回の予防接種歴がない場合は、風しんの免疫の有無を確認するための抗体検査を受けてください。
その結果、抗体価が低いことが判明した方については、妊婦とお腹の子どもを守る観点からも予防接種を受けることについてご検討ください。
参照元:Q.3 現在妊娠しているのですが、妊婦健診での抗体検査の結果、抗体価が低いことがわかりました。今後どのようにすればよいでしょうか。│
過去に風しんにかかったら予防接種は受ける必要はない?もう風しんにはかからない?
今まで風しんにかかったことが確実である(検査で風しんの感染が確認された場合)場合は、免疫を持っていると考えられることから、予防接種を受ける必要はありません。
しかし、風しんかどうか明らかでない場合は、かかりつけの医師にご相談ください。たとえかかったことがある人がワクチン接種をしても副反応は増強しません。
もし、風しんまたは麻しんの片方にかかったことがあっても、他方にはかかっていない場合、定期接種対象者は麻しん風しん混合ワクチンを定期の予防接種として受けることができます。
風疹情報が得られるサイト
風しんについて│厚生労働省
風疹の情報│国立感染症研究所ウェブサイト
風疹とは│国立感染症研究所ウェブサイト
風疹(rubella)は、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症である。
症状は不顕性感染から、重篤な合併症併発まで幅広く、臨床症状のみで風疹と診断することは困難な疾患である。
風疹に感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると、出生児が先天性風疹症候群を発症する可能性がある。
男女ともがワクチンを受けて、まず風疹の流行を抑制し、女性は感染予防に必要な免疫を妊娠前に獲得しておくことが重要である。
風疹Q&A│国立感染症研究所ウェブサイト
PDF版の風疹Q&Aはコチラ
2018年の風疹最新情報の関連記事
【東京都】風疹流行で緊急対策へ‐妊娠予定・希望者と同居者
東京都は7月下旬以降、風疹患者が増加していることを受け、先天性風疹症候群の発生防止を目的とした緊急対策を、区市町村と連携して実施する。
都内の風疹患者報告は、7月下旬から連続してあったが、9月に入りその数が急増、第42週(10月15~21日)は1週間で70人を超え今年最多の報告数となった。今年第1週から第42週までの累計は510人となっている。
風疹予防助成、男性に拡大 足立区、19歳以上全員対象
首都圏を中心に風疹患者数が増加する中、免疫があるかを調べる抗体検査と予防接種の費用の助成対象を男性にまで拡大する取り組みが、都内の各自治体で進んでいる。
男性の受診を促して風疹の流行を抑え、妊婦を感染から守ることが主な目的

オーストラリア、風疹根絶を宣言 米は日本への渡航自粛を勧告
(CNN) 世界保健機関(WHO)は10月31日、オートラリアで風疹が根絶されたと発表した。
一方、米疾病対策センター(CDC)は日本での風疹の流行を受け、日本への渡航に関する警戒情報を出している。
風疹は米大陸では既に根絶されており、オーストラリアでの根絶について、同国のハント保健相は「公衆衛生上、極めて重要な功績」と位置付ける。
風疹は感染性の強い疾患だが、ワクチン接種で予防できる。妊婦が感染すると、障害を持つ子どもが生まれたり、流産したりする恐れもある。
CDCは、妊婦や予防接種を受けていない人などに対し、風疹が流行している間は日本への渡航を控えるよう呼びかけている。

風疹で子に障害…自分責める母たち「どうか予防接種を」
風疹の流行が続いている。国立感染症研究所の23日の発表によると、直近1週間(8~14日)の患者数は141人で、6週連続で100人を超えている。
また、今年に入ってからの累計患者数は1289人で、昨年1年間の患者数(93人)の約14倍になった。
この流行の推移を、身を切られるような思いで見つめている人たちがいる。
「私さえ風疹にかからなければ、娘を亡くすことはなかった。風疹はワクチンで防げる病気なんです。どうか予防接種に行ってください」
風疹のアウトブレイクです “3分で読める” 知っておくべき最低限のこと
妊婦が感染すると先天性風疹症候群(CRS)になる可能性が。
赤ちゃんの耳や目、そして心臓などに障害が出ます。

妊婦が風疹に巻き込まれないよう指導を 日本産婦人科医会が「緊急報」
日本産婦人科医会は31日、風疹に関する「緊急報」をホームページに掲載した。
産科医に対し、妊婦(20週未満)が風疹に巻き込まれないよう指導することなどを求めている。

風疹の流行拡大が止まらない! 「昔かかったことがある」の思い違いにも要注意
今年は例年に比べて「風疹」という言葉を耳にする機会が多いと感じている人もいるのではないだろうか。
それもそのはず、今月7日までに報告された今年の累計患者数は、昨年のおよそ12倍の1,103人にのぼっている。
ちなみに、1,000人を超えたのは過去5年間で初めて。引き続き、風疹の流行拡大が止まらない。

風疹患者、17年の13倍超 米は妊婦の渡航自粛勧告
国立感染症研究所は23日、14日までの1週間に新たに141人の風疹患者が報告されたと発表した。
6週連続で150人前後の増加が続いている。
2018年の累積患者数は1289人となり、昨年1年間の患者数93人の13倍を超えた。
地域別では東京が46人で最も多かった。
次いで神奈川26人、千葉15人、愛知10人で、首都圏での増加が目立つ。患者は特に30~40代の男性に多い。

風疹の流行続く、7週連続で100人超の新規患者
風疹の流行が止まらない。10月21日までの1週間(第42週)に報告された風疹患者は174人で、7週連続の100人超の増加となった。
期日遅れの報告を加えると累計で1486人となり、このままのペースで増加すれば2012年の2353人を超える可能性も出てきた。
地域的な広がりも見られ、大阪府や福岡県、愛知県や兵庫県など首都圏以外からの報告も目立っている。
