ロタウイルスの大人・子供(赤ちゃん)の症状、予防接種(ワクチン)情報(受ける割合/副作用/効果/費用)、検査方法、治療法(薬)、感染経路、消毒方法、予防方法、流行時期、学校(幼稚園/保育園)の出席停止期間を信頼性の高い厚生労働省や、国立感染症研究所 感染症疫学センターの情報を元に記事を作成しました。
ロタウイルスの基本情報
ロタウイルスの情報を厚生労働省のロタウイルスに関するQ&Aを中心に記事を作成しました。
ロタウイルスとは?
ロタウイルスは、ノロウイルスの倍ぐらいの大きさで、直径約100ナノメートル(1万分の1ミリメートル)のウイルスです。
感染者の下痢便1グラムの中には1000億から1兆個のロタウイルスが含まれているといわれています。
便に含まれるウイルスの量が多いことで知られているノロウイルスと比べても、その100万倍ものウイルス量です。
ちなみに、「ロタ」とはラテン語で車輪という意味で、電子顕微鏡で見ると車輪のような形をしています。
潜伏期間
ロタウイルスの潜伏期間は2~4日です。
発症しやすい年齢(大人はうつる?)
ロタウイルスは乳幼児期(0歳~6歳頃)にかかりやすい病気です。
一般的に5歳までに、ほぼ全ての子どもがロタウイルスに感染するといわれています。
大人はロタウイルスの感染を何度も経験しているため、ほとんどの場合、症状が出ません。
【補足説明】ロタウイルス検出例の年齢(2005年9月~2012年5月)病原微生物検出情報(2012年6月7日現在)│国立感染症研究所 感染症疫学センター
参照元:ロタウイルス検出例の年齢(2005年9月~2012年5月)病原微生物検出情報(2012年6月7日現在)│国立感染症研究所 感染症疫学センター
上の画像の通り、群によって多少の違いはあるものの、0~2歳がロタウイルスの患者大半を占めていることがわかるかと思います。
そのため年齢が低い乳幼児が特にロタウイルスに対して注意が必要と言えるでしょう。
症状
主な症状は、水のような下痢、吐き気、嘔吐、発熱、腹痛です。
重い脱水症状が数日間続くことがあります。
脱水症状がひどくなると点滴が必要となったり、入院が必要になることがあります。
5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40~50%前後はロタウイルスが原因です。
ロタウイルス性腸炎による死亡例は、日本国内で毎年2~18名が報告されています(平成12年~24年厚生労働省人口動態統計)。
乳幼児の症状
乳幼児は、激しい症状が出ることが多く、特に初めて感染したときに症状が強く出ます。
合併症
けいれん、肝機能異常、急性腎不全、脳症、心筋炎などが起こることがあり、死に至る場合もあります。
意識の低下やけいれん等の症状が見られたら、速やかに、近くの医療機関を受診しましょう。
予防接種
日本では、2種類のロタウイルスのワクチン(単価と5価)が承認されていて、任意で接種を受けることができます。
対象者はいずれのワクチンも乳児であり、具体的な接種期間は、単価ロタウイルスワクチン(2回接種)の場合は生後6~24週の間、5価ロタウイルスワクチン(3回接種)の場合は生後6~32週の間です。
ただし、どちらのワクチンも1回目の接種は14週6日までが推奨されます。
詳細については、医療機関でご相談ください。
予防接種を受ける割合
Q.任意の予防接種のうち、お子さんに受けさせた(もしくは受けさせる予定の)ものはどれですか?
1位 インフルエンザ 69.0%
2位 おたふくかぜ 57.7%
3位 ロタウイルス 28.1%
4位 髄膜炎菌 13.1%
5位 A型肝炎 5.8%
6位 狂犬病 5.1%
子どもを持つ女性を対象に子どもに受けさせた任意の予防接種の結果が上記の通りです。
ロタウイルスの予防接種を受けた割合は、28.1%と3割を切っているんですね。
ほぼ全員が一度はかかると言われるロタウイルスですが、任意予防接種としては費用が高額な部類に入るため、また他の病気にしてはマイナーな病気として位置づけられているため、任意予防接種が避けられがちなのかもしれませんね。
ですが、ロタウイルスは特に1回目の症状が重症化しやすい傾向があるため、是非摂取するようにしましょう。
ロタリックスRとロタテックRの特徴と摂取スケジュール
2012年6月現在、我が国において販売承認を取得しているロタウイルスワクチンは2つある。
1つはロタウイルス胃腸炎患者から分離したヒトロタウイルスを弱毒化し、細胞培養で増殖後精製した1価経口弱毒生ワクチン(ロタリックス®)であり、他方はヒトロタウイルス及びウシロタウイルスの遺伝子をリアソータント(遺伝子組換え)させて生成した5価経口弱毒生ワクチン(ロタテック®)である。
両ロタウイルスワクチンの特徴と接種スケジュールを表にまとめた(表)。
予防接種の副作用
ロタリックスの副反応としては、下痢や咳、鼻水などの症状がみられるケースがあるとのこと。
ロタテックの場合は、下痢や嘔吐、発熱、胃腸炎が見られるケースがあるとされています。
いずれも一過性の症状であり、数日で回復するものがほとんどであるとのことです。
もし、症状が続くようなら予防接種を受けたお医者さんに相談してくださいね。
ごくまれに「腸重積症」が発生するケースもあるので、予防接種の際にお医者さんに注意されたことはよく覚えておきましょう。
上記の通り、ロタウイルスの予防接種による副作用は、下痢、咳、鼻水、嘔吐、発熱、胃腸炎が短期間に起こる程度です。
ただし、ロタウイルスワクチンの副作用で一番怖いのが腸重積症です。
ちなみに、腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)とは、小腸が大腸の中に入り込んで(逆蠕動)してイレウス(腸閉塞)を発症する病気です。
参照元:腸重積症│Wikipedia
この副反応は、ワクチン未接種人口における自然感染によるものと比べ、有意差が出ていませんので、ワクチン接種する事の有益性は変わりません。
ただ、昔はロタウイルスの予防接種の副作用で「腸重積症」に気をつけないと言われていましたが、最近のワクチンはその発症率はかなり下がっています(自然発症率とほぼ同等と考えてよい)。
ロタウイルスワクチン接種後、1回目の接種後1週間以内に腸重積症を発症するリスクが高くなる
参照元:国内におけるロタウイルスワクチンと腸重積症の関係性についての検討(平成30年6月)│国立感染症研究所感染症疫学センター
ですが、上記の通り、1回目のワクチン接種後の1週間以内は発症率が高いと厚生労働省が通知しているので、その点は気を付けるようにしましょう。
予防接種の費用
ロタウイルスワクチンは、任意接種になるので、接種費用は自費になります。地域や病院によって異なりますが、おおよそトータル(全回数接種した場合)の値段が25000-35000円(金額は目安)です。
自治体によっては、費用の一部を負担する助成制度が設けられているところがあるので、確認を。
参照元:ロタウイルスワクチンの値段と接種タイミング│【小児科医監修】必要性はどのくらい?予防接種のロタワクチンの接種にかかる値段、接種回数など
ロタウイルスの予防接種の費用は、任意接種のため自費となります。
また、実際にかかる費用は、病院によって異なりますが、およそ3万円前後と考えてよいでしょう。
ですが、自治体による補助が出ることが多いため、負担を少しでも軽減させるためにも、自治体に問い合わせ・確認するようにしましょうね。
感染経路
ロタウイルスによる胃腸炎の患者の便に大量に含まれています。
患者の便を処理した後、たとえ十分に手洗いをしても、手や爪に数億個ものウイルスが残っていることがあり、ロタウイルスが付いた手などから感染が広がっていきます。
感染拡大の対処法(消毒方法)
感染を広げないようにするには、オムツの適切な処理、手洗いの徹底などが必要です。
オムツを交換するときには使い捨てのゴム手袋などを使い、捨てる場合はポリ袋などに入れます。
手洗いは指輪や時計をはずし、せっけんで30秒以上もみ洗いします。
衣類が便や吐物で汚れたときは、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)でつけおき消毒した後、他の衣類と分けて洗濯しましょう。
ロタウイルスにはアルコールなどの消毒薬ではあまり効き目がありません。
このようにロタウイルス感染者の便に関する物を触れた際は、しっかりと手洗いを行う予防を行うようにしましょう。
検査方法
最も多く用いられているロタウイルス胃腸炎の診断法は、便を用いて15~20分程度で結果が判明する迅速診断検査(イムノクロマト法)です。
この検査には健康保険が適用されます。
医療機関で、医師が医学的に必要と認めた場合に行われ、診断の補助に用いられます。
ただし、この検査法は、結果が早く出るメリットがありますが、ロタウイルスに感染していても陽性とならない場合もあります。
治療法(薬)
現在、ロタウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。
そのためロタウイルスの症状に対する対処療法のみとなります。
脱水を防ぐための水分補給や体力を消耗したりしないように栄養を補給することなどが治療の中心になります。
脱水症状がひどい場合には医療機関で点滴を行うなどの治療が必要になります。
下痢止め薬(止しゃ薬)は、病気の回復を遅らせることがあるので使用しないことが望ましいでしょう。
御紹介済みの通り、ロタウイルスには予防するためのワクチンはありますが、特効薬となる薬はありません。
そのためロタウイルスに感染した際は対処療法での治療がメインとなります。
予防方法
ロタウイルスは環境中でも安定で、感染力が非常に強く(ウイルスが10~100個程度のごくわずかな粒子の経口感染で感染が成立する)、たとえ衛生状態が改善されていてもウイルスの感染予防はきわめて難しく、事実上世界中のほぼすべての児がロタウイルスに感染し、胃腸炎を発症するとされている。
また、初感染時に重症化することが知られており、ロタウイルス感染症が原因の重症な合併症(急性脳症や多臓器不全など)が数多く報告されていることも考え合わせると、ロタウイルスワクチンによるロタウイルス感染予防は、重症胃腸炎並びに合併症の予防という両面から必要性が高いといえる。
上記の通り、ロタウイルスは非常に感染力が強いため、衛生状態が良い先進国でも感染しています。
また、消毒を行ってもほぼ効果がないため、ロタウイルスを予防すること自体が非常に難しいのです。
そのため、ロタウイルスの予防法としては、十分な手洗いが一番の対応策となります。
それでも手に少しでも菌が残っていることが多いため、ロタウイルスに感染してしまうことが多いのが実情です。
流行時期
例年、3月から5月にかけて乳幼児を中心に胃腸炎の流行が起こり、この中にロタウイルスによる胃腸炎が多く含まれています。
【補足】ロタウイルス感染症基幹定点あたり報告数年次別週別推移(2013年第42週~2017年第6週)
参照元:ロタウイルス感染症 例年、流行のピークは4月頃であり、今後患者数が急激に増加する可能性があります│感染症 予防接種ナビ
補足説明として、ロタウイルスの発症月を年別に示したグラフが上の図です。
発生件数は3月~5月に多い事がわかりますが、おおよそ4月をピークに発症数が多い事がわかると思います。
よって、4月前後の月、具体的には3月~5月は特にロタウイルスの感染を気を付けるようにしましょう。
国立感染症研究所「ロタウイルス」の発生状況
ロタウイルスの発生状況は、以下の国立感染症研究所が随時発表しているサイトが参考になります。
学校(幼稚園/保育園)の出席停止期間
ロタウイルスによる学校(幼稚園/保育園)の出席停止期間ですが、下痢、嘔吐が消失した後であれば投稿可能です。
参照にしたサイト
その感染症、学校や職場で、“何日休む必要があるの?”
学校、幼稚園、保育所で予防すべき感染症 感染症毎の登校、登園基準
ロタウイルスの情報が得られるサイト
ロタウイルスに関するQ&A│厚生労働省
ロタウイルス感染性胃腸炎とは│国立感染症研究所
病原微生物検出情報:IASR│国立感染症研究所
感染症発生動向調査週報:IDWR│国立感染症研究所
ロタウイルス感染性胃腸炎とは│国立感染症研究所
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受けられる期間が限られる「ロタウイルス」の予防接種!詳しく知っておこう
産まれて間もない赤ちゃんはまだ言葉を話すことができません。
ママやパパをはじめとした家族は赤ちゃんの顔色や機嫌、うんちやおしっこの状態を見ながら赤ちゃんの体調を管理していくことになります。
中でもうんちは赤ちゃんの体調を推し量る貴重なバロメーターのひとつかもしれません。
下痢をしていないか、回数は、便の柔らかさは……、などと家族が気にすることは少なくありません。
今回はうんちが関わる「ロタウイルス」について詳しく解説していきます。
ロタウイルスによる世界の小児死亡数を推定
ロタウイルス感染症は、世界の5歳未満の小児の下痢関連の合併症と死亡の主な原因となっている。
米Institute for Health Metrics and EvaluationのChristopher Troeger氏らは、Global Burden of Disease Study 2016(GBD 2016)のデータを分析し、世界各国の5歳未満の小児のロタウイルス感染症発症率に基づいて、ワクチンの接種により回避できた死亡件数を推定した。
詳細は、JAMA Pediatrics誌電子版に2018年8月13日に掲載された。
ロタウイルスワクチンで小児死亡が大幅減
ロタウイルス感染が、2016年に世界で発生した5歳未満の小児の推定12万8500人の死亡の原因で、そのうち10万4733例はサハラ以南で発生した。
ロタウイルス罹病率は人年当たり0.42例だった。
ワクチンの使用によって2万8000人以上の死亡が回避できたと推定され、特にサハラ以南でロタウイルスワクチンの使用を拡大することによって、5歳未満の小児の下痢に起因する全死亡の約20%を回避することができたと推定された。
乳幼児のロタウイルス感染に注意
厚生労働省は3月下旬、乳幼児に下痢などを引き起こすロタウイルス感染症が増加していると発表した。
ロタウイルス感染症は、例年3~4月に患者数が最も多くなり、5月ごろまで流行が続く。
感染を防ぐため、厚労省はおむつなどの適切な処理や、手洗いの徹底を呼びかけている。
【医師監修】ノロウイルスとロタウイルスの症状の違い、予防法や治療法は?
冬が深まるとテレビのニュースなどで「小学校でノロウイルスが流行し……」といったニュースを見かけることが多くなりますよね。
感染すると下痢や嘔吐の症状を引き起こすノロウイルスやロタウイルスなどの感染性胃腸炎。
実はどちらも流行る時期やかかる年齢、感染経路が異なります。
今回はこれらの違いや治療法についてまとめました。
ノロウイルスとロタウイルスは何が違うのですか?
まだノロウイルスにもロタウイルスにもかかったことがないのですが、感染してしまった家庭の話を聞いていると上手に対処できるのかと不安になります。
症状が似ているのでごっちゃになってしまうのですが、何が違うのでしょうか?
ロタウイルスの予防接種は、受けるべき?
予防接種のスケジュールを決めるときに、初めてその病名を知る人も多いであろう「ロタウイルス」。
任意接種であるものの、接種期間が限られているのもあって、受けるかどうか悩むこともあるかもしれません。
そもそも、ロタウイルスとはどのような病気なのでしょうか。そして、感染予防としてできることは?
小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。